自分が「聴覚情報処理障害/聞き取り困難症」というものを知ったのは数年前でしたが、「診断できる医療機関がまだまだ少ない」と書いているブログを見たりして「きっと群馬にはないだろうなぁ」と思ったりしていました。
しかも、発達障害と同じく「工夫はできても治療はできない」ものだろうというのもあり、すぐに受診したい・診断を受けたいという希望もありませんでした。
しかし、最近になって近くの大学病院で検査が受けられると知り、受診してみると「自覚しているとおり、聞き取り困難の症状がみとめられる」という診断をもらいました。
結果的に「受診してよかった」と思っているので、今回自分が感じた「治らなくても受診する意味」について少し書きたいと思います。
はじめに:診断を受ける「べき」ではない

診断を受けてよかったよ!と書くと「診断は受けるべきだよ」と言われているように感じる人もいると思うので、念のため「そういうわけではないよ」ということを言っておきたいと思います。
自分は「結局自分がその状態であることに変わりがないなら、状態に名前が付いていたほうがいいじゃない」と思う派なのですが、そういう人ばかりではありませんよね。(むしろ少数派かも)
「診断を受ける=障害があると言われる」こと自体に抵抗があるという方もいると思います。「治るわけでもないのに、わざわざ検査を受ける意味があるのか」と感じる方も多いでしょう。
それがストレスになってしまうなら、無理に診断を「受けるべき」とは思いません。治療できる病気と違って、原因を探らなかったから病状が悪化していくというものでもないので。
しかも、現時点では障害者手帳・公的な助成の対象にもならなそうなので、特に成人の場合は制度的なメリットも少ない(※)です。
※全国的に、聞こえを補助する機器(補聴器・ロジャーシステムなど)の購入に対して助成金が受けられるのは高度難聴の人(障害者手帳の対象となる人)だけ、ということに対する感想です。
ただし、障害者手帳の対象とならない「軽度難聴」などの場合も子どもであれば公的助成の対象となる場合があります。自治体により基準や対象には差があるので、お住まいの自治体のホームページなども確認してみてください。
また、制度的なメリットは少なくても、小さなうちに聞こえの苦手さを把握することは、聴覚的な特徴に合った生活スタイル・進路を選んだり、聞こえなかったときの対応を練習することにはとても役立つと思います。
少し話がずれましたが、もう完全に大人になってしまった自分が個人的に感じた「受診」「診断」のメリットがこちら。
良かったこと① 症状を“数値で”説明できる
聞こえ方や見え方など感覚的なものは、人と比較するのが難しくて「なんとなく聞き取りにくい」としか言えないことが多いと思います。
実際、自分もこれまでは「聞き間違いが多い」「ざわざわした場所だと聞き取るのが大変」といった感覚的な説明しかできませんでした。
そのため、「私もそういうことあるよ~」と軽く受け取られてしまうことも少なくなかったと思います。
ですが検査を受けたことで、例えば
「一般的には9割ほど聞き取れる状況で、自分は半分程度しか聞き取れていないそうです」
といったように、数値で説明できるようになりました。これは家族や友人だけでなく、職場などで説明する際にもとても役立つと感じています。
周りから見てもわからないことだからこそ、「どれくらい困っているのか」を数字で客観的に伝えやすくなるのは、大きなメリットだと思います。
② 自分の“苦手な条件”が具体的にわかる
検査では、単に「聞こえる・聞こえない」だけでなく、
- どの音の高さが苦手なのか
- どれくらい雑音の影響を受けるのか
- 左右の音を聞き分けるのが苦手か
といったことも細かく調べます。さらに、発達障害の診断の際に受けた知能検査の結果と併せて「音の処理のどの段階でつまずいているのか」といった点まで見てもらえました。
その結果、「日常のなかではどういう環境だとつらいのか」「どんな対策が合いそうか」
を考えやすくなりました。(結果説明の用紙にも、ノイキャンイヤホンの使用や周囲への「聞こえにくさ」の明示などアドバイスも記載されていました)
自分の状況を把握するだけにとどまらず、日常生活の工夫につなげやすくなるというのも大きな収穫だったと思います。
③ 「聞き取れません」と言っていい安心感

これは検査結果がどうということではないので「メリット」というわけではありませんが、個人的にとても印象に残っている点です。
普段の自分は、人の話を聞き取れないと「迷惑をかけてしまうのではないか」「何度も聞き返して申し訳ない」と感じて、必死に予測を繰り返して会話をしています。
ですが検査中は、「わからないものは、わからないと言っていい」という前提があるので、とても気持ちが楽でした。
最初は検査とはいえ「なんとか当てなきゃ」と思っていましたが、回数を重ねるうちに、自然と「聞き取れません」と言えるようになり、その経験が自分にとってはとても印象的でした。
また、普段の生活では「ちゃんと聞いてよ」「誰でもうるさい場所なら聞き取りにくくない?気にしすぎだよ」と言われてしまうこともある中で、
対応してくれた言語聴覚士の方が「こう聞こえたんですね」「ここは難しかったみたいですね」と事実として受け止めてくれたことに思った以上に安心感をおぼえました。
聞き取りが不得意なのは昔からなので、メンタル的にももう慣れたと思っていましたが……意外と、普段「聞き取れていると装うこと」に疲れていたのかもしれないと自覚するきっかけにもなりました。
おわりに
聞き取り困難症の検査は、受けたからといってすぐに何かが大きく変わるわけではないかもしれません。
また別の機会に書こうと思いますが、診断を受けたら受けたで「それをどの範囲の人に/どう伝えるか」「どんな協力が欲しいと提案するべきか」といった課題も出てきます。
それでも、診断を受けたことで「聞こえの負担をマシにする環境調整」の一歩めくらいは踏み出せた気がしています。
なので、もし受診を迷っている方がいれば「こういう面で診断や検査が役立つこともあるみたい」と、ひとつの参考になれば嬉しいです。

















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